自宅・引越し・荷物 読了 約4分
海外赴任中の持ち家は売る・貸す・空けるのどれ?
先に答え
- 判断の軸は「戻る確度」。期間が決まっているなら貸す、戻らないなら売る、読めないなら空ける
- 貸すと日本国内の不動産所得が発生し、非居住者になっても日本で課税される(国税庁 No.1926)
- そのため貸す場合は納税管理人の選任と毎年の確定申告がほぼ必須になる
- 空ける場合も、郵便・固定資産税の納付書・管理費の引き落としを誰が処理するかを決めておく
赴任の辞令が出て、住宅ローンが残っている家を見ながら考えます。売るのか、貸すのか、そのまま空けるのか。会社は住まいの面倒までは見てくれません。
先に結論を書きます。判断の軸は「戻る確度」ひとつです。期間が明記された赴任なら貸す、戻る見込みがないなら売る、期間が読めないなら空ける。この順で考えると、不動産会社から出てくる提案を同じ物差しで比べられるようになります。
そして、どれを選ぶかによって日本側の税務手続きの量がまったく変わります。とくに「貸す」を選ぶと、非居住者になっても日本で確定申告が毎年必要になり、納税管理人がほぼ必須になります。ここを知らずに貸し始めると、出国後に慌てることになります。
3つの選択肢は、何が違うのか
| 戻る確度 | 収入 | 日本での税務 | 帰任時 | |
|---|---|---|---|---|
| 売る | 戻らない | 売却代金(一度きり) | 譲渡所得の扱いを確認 | 住まいを探し直す |
| 貸す | 期間が決まっている | 毎月の賃料 | 不動産所得の確定申告が毎年発生 | 契約形態次第で戻れる |
| 空ける | 読めない | なし | 原則なし(固定資産税は発生) | そのまま戻れる |
「貸す」だけ、税務の欄が重くなっています。理由は次の通りです。
貸すと、日本での確定申告が毎年ついてくる
国税庁のタックスアンサー No.1926「海外勤務中に不動産所得などがある場合」は、海外勤務で非居住者になった人が日本国内の不動産から所得を得る場合の取り扱いを定めています。日本国内にある不動産から生じる所得は、非居住者になっても日本で課税されます。
これが意味するのは、賃貸に出した瞬間に「毎年、日本で確定申告をする人」が必要になるということです。自分は海外にいるので、代わりに手続きをする人を決めておく必要があります。それが納税管理人です。
国税庁 No.1920 は「出国」を、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないことになることと定義しています。つまり納税管理人を立てるかどうかで、出国前に準確定申告をしなければならないかどうかまで変わります。
納税管理人は日本に住所がある個人か法人であれば親族でもなれます(資格は不要)。ただし実際に申告書を作るところまで任せるなら、税理士に依頼することになります。詳しくは納税管理人の記事にまとめました。
貸す場合に決めておくこと
- 契約の形態 — 帰任時に確実に明け渡してもらう必要があるなら、期間を区切る定期借家契約を検討する
- 管理を誰がやるか — 入居者対応・修繕・家賃の集金。海外にいる本人が直接やるのは現実的ではない
- 賃料の受取口座 — 非居住者になったあと、その口座が使えるかを銀行に確認する
- 納税管理人 — 誰を立てるか。確定申告まで任せるのか、書類の受け取りだけなのか
- 原状回復の基準 — 帰任して戻ったときの状態をどこまで求めるか
売る場合に詰まるところ
売却は判断としては単純ですが、時期の問題があります。居住者として売るか、非居住者として売るかで税務上の扱いが変わるため、出国前に売り切るのか、出国後に売るのかで結論が変わります。
ここは個別の判断になるので、税理士に確認する項目として上のリストにまとめました。相場を把握したいだけなら、複数社に査定を出して幅を見るところから始めるのが早いです。
空ける場合にも、やることはある
空き家にしておけば何も起きない、というわけではありません。
- 郵便 — 日本郵便の転居・転送サービスは国内の新住所への転送で、海外には転送されません。実家や納税管理人に転送をかけることになります。転送期間は届出日から1年です
- 固定資産税の納付書 — 毎年届きます。受け取る人と払う人を決めておかないと滞納になります
- 管理費・修繕積立金 — マンションなら引き落としが続きます。非居住者になった後もその口座が使えるかを確認します
- 通気と点検 — 長期間閉め切ると傷みます。誰かに定期的に開けてもらう段取りが要ります
いつ動くか
赴任までのスケジュールは、家の判断を先にしないと組めません。
- 3〜6か月前 — 売る/貸す/空けるを判定する。査定と賃料査定を同時に取って、数字で比べる
- 3か月前 — 貸すなら管理会社を決め、契約形態を詰める。売るなら媒介契約を結ぶ
- 1〜2か月前 — 納税管理人を決める。海外引越しの見積もりを取る
- 1か月前 — 納税管理人の届出。銀行・保険の住所変更
- 出国直前 — 郵便の転送手続き
日本側の手続き全体は出国前手続きチェックリストにまとめてあります。家の判断はその中の1項目ですが、他の項目(納税管理人・銀行口座・郵便)と連動するので、いちばん早く決める必要があります。
Q&A
会社が借り上げてくれる場合はどうなりますか
社宅として会社が借り上げる形なら、賃料の支払い主が会社になります。それでも貸主である自分に不動産所得が発生する点は変わりません。確定申告の要否は勤務先の制度ではなく税法で決まるので、勤務先の総務ではなく税務署か税理士に確認してください。
住宅ローン控除はどうなりますか
自分が住まなくなった住宅の扱いは、居住の実態と期間で変わります。ここも個別判断になるため、税理士に確認する項目に含めてください。
リロケーション会社と普通の不動産会社の違いは
リロケーション会社は、赴任期間が決まっている人が「一時的に貸して、帰任時に戻る」ことを前提にしたサービスを持っています。比べるときは、帰任時に確実に明け渡しを受けられる契約かどうかを最初に聞いてください。ここが両者のいちばんの違いです。
よくある質問
定期借家契約なら必ず戻れますか
期間の定めのある契約なので、期間満了で終了する設計です。ただし契約の書き方と再契約の扱いは物件と契約内容によります。不動産会社に「帰任時に確実に明け渡してもらえる契約か」を文書で確認してください。
空き家のまま置いておくのは損ですか
賃料収入がない一方で、固定資産税・管理費・修繕積立金は発生し続けます。ただし貸すと原状回復や設備更新の負担も生じます。どちらが有利かは物件と期間で変わるため、両方の年間コストを書き出して比べてください。
売るなら出国前と帰国後のどちらがいいですか
税務上の扱いが居住者か非居住者かで変わるため、ここは個別判断になります。上の「税理士に確認する項目」を持って相談してください。
この記事の数字は、以下の公式ページを上記の日に直接開いて確認しました。